先天性股関節脱臼の早期発見・早期治療のすすめと予防方法

先天性股関節脱臼の早期発見・早期治療のすすめと予防方法

LIFE STYLE 2019.02.28

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自分の子供が先天性股関節脱臼かどうか不安

「先天性股関節脱臼」とはどんな症状があるのでしょうか。生後間もない子供がいる家庭なら知っておきたいし、知っていれば予防も出来ます。

赤ちゃんは股関節が脱臼しても大人のように痛がりません。生後間もない赤ちゃんがいる家庭では、自分の赤ちゃんが先天性股関節脱臼を患っていないか不安に思うこともあるでしょう。

先天性股関節脱臼の症状としては、股関節が開きにくくなったり、左右の足の長さが違っていたりします。さらに歩き始めるころには、足を引きずっていたり(破行)、お尻を後ろに突き出して歩いたりという状態が見られます。

放っておけば将来の歩行障害などが残ってしまい、親としては不安もありますが、早期発見・早期治療できれば治る病気です。そこで、「先天性股関節脱臼」の症状や原因、家庭でも出来るチェック項目などを紹介します。

先天性股関節脱臼は早期発見が大事

先天性股関節脱臼とは、生下時や生下後に、大腿骨頭と臼蓋の位置関係が悪く、股関節が脱臼または亜脱臼している状態です。先天性という名前がついてはいますが、出生直後に完全に脱臼していることはほとんどありません。原因は、出生前の胎位や、出生後の環境因子(オムツによる股関節の過伸展)などがあげられます。

日本は昔、脱臼多発国と言われていましたが、最近は、1000人に1〜3人に減ってきています。男女比は、1:5〜9と女児に多く見られ、最近の傾向としては、家族歴のある赤ちゃん(家族の中に、先天性股関節脱臼や変形性股関節症の人がいる赤ちゃん)が多くなっています。

放っておけば痛みが生じて歩けなくなったり、破行などの障害が残る、変形性股関節症になってしまうなど、将来が懸念されますので、早期発見、早期治療が望ましいです。

先天性股関節脱臼の原因

以前は、生まれつき股関節が脱臼しているものと思われており、「先天性股関節脱臼」という名前がついていますが、最近では出生後の外的要因で発症することがわかってきて、「発育性股関節形成不全」と名前が変わってきています。

しかしながら、関節がもともと柔らかいなどの遺伝的な要素も考えられます。その他、妊娠時に逆子だったり、多胎妊娠だったりで、足が伸ばされた状態だったことでも発症します。

遺伝的な内的要因

先天性股関節脱臼になる出生前の要因としては、妊娠中にお腹の中で、膝を伸ばした体位でいた、いわゆる逆子(骨盤位分娩)だった赤ちゃんや、多胎妊娠などに多く見られます。その他、染色体異常や、先天性多発性関節拘縮症など、先天性奇形として発症するタイプもあります。

先天性股関節脱臼は明らかに遺伝する病気ではありませんが、生まれつき関節が緩い、骨盤、股関節の形態が悪いなどの遺伝的要素があり、そこへ外的要因が加わることで、脱臼しやすくなるのではないかと考えられています。

締め付けが要因の外的要因

日本は昔、三角おむつを使用しており、赤ちゃんの股関節を強く締め付けていました。これが原因で股関節が強制的に伸展や屈曲位に固定されて、先天性股関節脱臼を引き起こしていたと考えられます。

赤ちゃんの股関節は不完全で、強制的な圧迫などが続くと脱臼しやすくなります。今では股おむつが主流となり、昔と比較して先天性股関節脱臼は減りましたが、おむつの問題が完全になくなったわけではありません。

現在の紙おむつはサイドのテープが幅広く、それが、股関節を圧迫してしまいます。近年、先天性股関節脱臼が増えつつあるのは、紙おむつになってからお母さんたちがあまり注意を払わなくなってきた事も関係しているようです。

どんな症状があるか

赤ちゃんは大人と違って、股関節が脱臼しても痛みを訴えません。大人が早めに赤ちゃんの異常に気付いてあげなければ、治療が遅れてしまいます。だいたい3〜4か月までには発見してあげましょう。

先天性股関節脱臼の赤ちゃんは、早期から足の長さの違いがみられ、足が開きづらく、大腿部のしわが左右違っていたり、片方の足だけ伸ばしていることがあります。また、大腿骨頭が寛骨臼にしっかりはまっていないために、足を開くときにクリック音がします。

赤ちゃんが歩き始めると、足を引きずったり、お尻を突き出して歩いたりするなどの破行が見られることもあります。また、おむつをつけるときに、片方の腰だけが出っ張ていて、付けづらいことがあり、こんな時は先天性股関節脱臼の恐れがあります。

左右の足の長さの違い

先天性股関節脱臼では、乳児期早期から症状が現れ、足の長さが違うことで気がつきます。左右の足の長さが違うので、膝を曲げて立てたときに、膝の高さが違うのです。また、股関節を伸ばした時に、鼠径部のしわのより方が左右違うことでも発見されます。

開脚が困難になる

先天性股関節脱臼の赤ちゃんは、左右どちらかもしくは左右どちらも足が開かなくなり、片方の足だけを伸ばしていたり、赤ちゃんらしい開排の肢位(カエルのように股関節を左右に開いた状態)が取れなくなっています。

また、大腿骨頭が寛骨臼にしっかりはまっていないので、足を開くときに、ポキポキという音や、クリック音がします。無理やり股関節を動かしてしまうと、骨頭を傷つけてしまうので気をつけましょう。

自宅でできる予防法

日本小児外科学会などによると、1970年代は先天性股関節脱臼は珍しい病気ではなかったのが、それ以降は紙おむつの普及や予防の啓発などにより減少傾向にありました。しかし、近年では症例が減ったことから、医師や保健所の乳児検診の経験が少なくなり、発見が遅れ、脱臼が見落とされるケースが増えているようです。

先天性の奇形や、もともとの形態異常を除けば、先天性股関節脱臼は予防できます。先天性股関節脱臼は今では発育性股関節形成不全とも言われており、出生後に家族が注意しなければなりません。家族はどんなことに注意すべきか紹介します。

抱き方を変える

赤ちゃんはM字に足を開いた状態が自然な肢位です。先天性股関節脱臼を防ぐには、足を開いた状態で親の胸に抱きつく格好、すなわち「こあら抱っこ」と呼ばれる抱き方がおすすめです。

おくるみや横抱き、スリング(抱っこ用の布)は足が伸ばされやすく、脱臼しやすくなり、お勧めできません。

着衣物を変える

先天性股関節脱臼は寒い時期生まれや、関節が柔らかい女児に多くみられています。寒い冬など厚い布団や着衣は股関節を圧迫し、股関節が伸展しやすくなります。赤ちゃんらしい肢位、つまりM字に開いた状態(カエルのような足の開き方)を取りにくくしてしまうのです。寝返りを始める生後6か月までは、足が自由に動かせるような、緩めの着衣を着せると良いでしょう。

また、昔は布おむつやなど、三角おむつが主流でしたが、紙おむつが普及し、股おむつになったことや、注意・啓発などによって、一時は先天性股関節脱臼は減少傾向でした。しかし現在の紙おむつでサイドのテープが幅広いものがあり、股関節を圧迫してしまいます。締め付けが強い衣服やおむつは避けましょう。

先天性股関節脱臼が疑われるチェック項目

大人が脱臼すると強い痛みを伴いますが、赤ちゃんは自覚症状もないまま動くので発見が見落とされるケースもあります。

望ましい治療開始時期は、生後6か月以内と言われており、6か月を過ぎると、装具の装着が出来なくなります。早いうちから自宅でもチェックすると良いでしょう。

また、以下の5つのチェック項目のうち当てはまるものがあれば、先天性股関節脱臼が疑われる可能性がありますので早めに医療機関を受診することをおすすめします。

向きぐせがあるか

赤ちゃんの向き癖も脱臼の原因になります。赤ちゃんによっては、いつも同じほうばかり向いてしまうこともあります。いつも同じほうばかり向いていると、向いている側と逆の足が伸びやすくなって発症しやすくなります。

赤ちゃんがいつも同じほうを向いて寝ていないかチェックしましょう。向いている方と逆側にタオルを入れてあげると、反対側を向きやすくなります。

女児は発症しやすい

女児の発症率は男児の5〜6倍で、男児より女児に発症しやすい傾向があります。これは、ホルモンの関係で、女児の方が関節が緩い傾向があるからと言われています。

家族に股関節が悪い人がいる

先天性股関節脱臼はほとんどが出生後の環境因子が原因ですが、遺伝的要素もあげられます。先天性股関節脱臼は明らかに遺伝する病気ではありませんが、もともと関節が緩かったり、骨盤や股関節の形態が悪いなどの遺伝的要素があると、そこへ外的要因が加わり、発症するケースもあります。

家族の中や血縁関係者に変形性股関節症などの病気を持っているかなどもチェックしましょう。

逆子で生まれたか

赤ちゃんは狭い産道を通って生まれてくるため、関節が緩く、不安定です。さらに、妊娠時に逆子だった場合は、お腹の中で足を伸ばしている状態であったために、先天性股関節脱臼を発症しやすくなります。また、多胎妊娠においても発症しやすくなるのでチェックしましょう。

寒いところで生まれたか

先天性股関節脱臼を発症した赤ちゃんの7割が10月〜3月生まれのため、寒いために厚着をさせようとして股関節に負担がかかっていると考えられます。厚みのある布団や厚手の衣服は、股関節を圧迫し、赤ちゃんらしい足の開きがしにくく、股関節伸展位にしやすくなります。寒い場所や、寒い時期に生まれた赤ちゃんは要注意が必要です。

どんな検査をするか

新生児期には完全脱臼していることはなく、徒手によるクリックテストを行いますが、経験豊富な専門医でないと、骨頭に傷がつき、後々ペルテス病などを引き起こすことがあります。

3〜6か月になると、股関節のしわに左右差が出たり、開排制限が見られ、先天性股関節脱臼が疑われる場合、レントゲン検査をします。しかし乳幼児は骨が未発達なため、レントゲン検査による診断が難しいことがあります。

また、保護者の中にはレントゲンによる放射線被爆のリスクから、レントゲン検査に抵抗を感じる方もいます。この場合はエコー検査を実施します。エコー検査による診断はより専門的な技術と知識が必要になるので、まだまだ普及していませんが、安全な検査法のため今後普及すると考えられます。

病院での治療法

先天性股関節脱臼は早期に発見できれば、早期治療で治ることがほとんどです。装具や牽引などがあり、赤ちゃんはもちろん、両親にとっても負担になりますが、治るものなのだと気長に治療することが大事です。

装具による装着や徒手での整復が出来なかった場合は手術による観血的整復が行われます。手術による観血的治療は手術創が残ってしまう問題や、巨大骨頭などの問題が起こりやすいため、出来るだけ早期に赤ちゃんの異常に気付き、早期治療を行えるように注意しなければなりません。

生後6か月以内に行うリーメンビューゲル法

乳幼児早期に発見できた場合は、股関節をなるべく開いた状態を保つようにします。臼蓋不全の場合も股関節をなるべく開いた状態を保てばほとんどが自然に治癒します。

亜脱臼や完全脱臼の場合、生後3〜6か月の赤ちゃんには、リーメンビューゲルという装具を装着します。赤ちゃんの足を開排状態に固定するため、肩から足をつるバンドです。リーメンビューゲル装着後、亜脱臼はほとんど完治し、完全脱臼でも85%が1週間以内で整復されます。

整復後は、成人になってから股関節に痛みを伴う、変形性股関節症などが発症しないように、定期検診を行い、経過観察します。 

上体を固定させる牽引法

リーメンビューゲル装具は6か月を超えると整復率がかなり低下し、1歳を超えると装具の装着は困難になります。7か月以降では、医療機関によって治療法は様々ですが、牽引して徒手による整復、または手術による観血的治療法が行われます。

牽引方法には代表的なもので、オーバーヘッドトラクションがあります。牽引によって股関節周囲の緊張を和らげて、骨頭障害を防止しながら、整復します。これは、水平牽引を行ってから、下肢を垂直に牽引して、徐々に外転させることで整復しようとするものです。

装具や徒手による整復が出来なかった場合、手術による観血的整復が行われます。これは股関節内外で整復の妨げになっているものを手術によって直接除去するもので、入院期間が短くて済むという利点はありますが、手術創の問題や巨大骨頭の問題など欠点もあります。

先天性股関節脱臼の早期発見で子供を健康にする

先天性股関節脱臼は早期発見、早期治療がカギですが、発育性股関節形成不全と言われるなど、先天奇形やもともとの形態異常など以外は両親が注意して赤ちゃんをみていれば予防も出来ます。

股関節を圧迫するような厚手の着衣、サイドテープのきついおむつは着せないこと、コアラ抱っこで赤ちゃんを抱っこすることなど、知っていれば簡単に出来ることばかりです。

治療となると装具を着けたり、入院したり、赤ちゃんにとっても両親にとっても負担にはなってきますが、気長に治ることを信じて続けましょう。

発見が遅れてしまうと、適切な治療が受けられなくなったり、手術をしなければならなくなります。出来るだけ早く赤ちゃんの異常に気付き、早期発見、早期治療することで、将来の不安も解消し、健康にすくすく元気に育ってもらいましょう。

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